イエナの戦い仮想シナリオをプレイする際に、史実も考慮した方が良い。そこで、
何故プロシア軍本隊は、ホーエンローエ軍と分かれてアウエルシュタットに向かったのか
という疑問の答えを見つける事にする。
1.プロシア軍本隊の行動理由
(1)10月13日(会戦前日)の状況
The Campaigns of Napoleonのp437によれば、プロシア軍首脳部は下図(*1)のような
予想外の状況において、どうすべきか議論したとの事。
・フランス軍がナウムブルク(Naumburg)を占領し、ライプツィッヒ方面の連絡線が遮断された。
(連絡線は補給路も兼ねているので、補給を心配する必要が生じた。)
・別のフランス軍がイエナ(Jena)付近に居る。
(ダブー軍団とランヌ軍団の存在は分かったが、他の部隊の所在は分からない状況と思われる。)
(*1)Military History and Atlas of Napoleonic WarsのMAP61の抜粋である。
(2)プロシア軍首脳部の議論
(A)次の2案が議論され、案2を採用した(The Campaigns of Napoleonのp437)。
案1)イエナ近郊で決戦を行う。
案2)直ちにフライブルク(Freiburg)、メルゼブルク(Merseburg)経由でライプツィッヒ方面に後退する。
これによりハレ(Halle)に居る予備軍団を支援すると共に東側はエルベ川で守られる(*2)。
(それよりも、補給路の再開が重要と思われる。)
(*2)フランス軍が側背に回り込んだ事にプロシア軍が動揺しているように思われる。
(B)行動方針
・プロシア軍本隊は、アウエルシュタット付近の敵を排除して後退ルートを安全にする。
・ホーエンローエ軍は、カペレンドルフ(Kapellendorf, 現在地)付近で本隊の側面を守る。
・ルッヘル軍団は、ワイマール(Weimar)付近で本隊の背後を守る。
・後退ルートが安全になったら、ホーエンローエ軍とルッヘル軍団も後退する。
(3)10月13日から14日(会戦当日)の行動
プロシア軍は上記の行動方針に沿って移動・交戦した。ナポレオンはホーエンローエ軍を
プロシア軍本隊と思い込み、ランヌ軍団と親衛隊で足止めして後続の第Ⅳ、Ⅵ、Ⅶ、予備騎兵
軍団(半分)で決戦を挑むつもりで命令を出した。また、ダブーの第Ⅲ軍団にはプロシア軍の背後から、
ベルナドットの第Ⅰ軍団と予備騎兵軍団(半分)は側面から攻撃するように命令した。
下図はMilitary History and Atlas of Napoleonic WarsのMAP62の抜粋である。
2.仮想シナリオのプレイ指針
史実では上記のような状況であったので、プロシア軍本隊がイエナで戦う場合には、
側面(ドルンブルク方面)と背後(アウエルシュタット方面)を守る必要がある。
その上で、早期に攻勢にでて短期決戦を行うのがプロシア軍の上記案1に沿ったものと思う。
<個人的な感想>
プロシア軍は案2を採用したにもかかわらず、アウエルシュタットの戦いは残念であった。
本当なら、軽く撃破できるつもりだったのかも知れない。
ナポレオンは機敏に行動してプロシア軍を補足できた。その意味では仮想シナリオの方が
描いていた会戦である。誤算があったのは、ベルナドット軍団への命令が十分でなかった事と
ドルンブルク隘路の渋滞である。
ナポレオン得意の敵連絡線(補給路)を遮断して、会戦に持ち込む方法がイエナ・アウエルシュタットの
戦いでも有効であったと思われる。プロシア軍の後退は、ナポレオンの指示で進軍してきたダブーの第Ⅲ軍団に
邪魔された上に敗退するという結果となった。プロシア軍の脆さもあったが、ナポレオンの機敏な行動・
的確な読み(プロシア軍を包囲するように各軍団を動かす)が勝因と思われる。さすがに賢い・・・。