つづき
12.勝敗の見直し
(1)背景
シェンカーバンの戦いの予想結果が、4つのアルゴリズムで勝ちになっていた。そこで、
理由があると思うので、見直すことにした。
(2)勝敗の決め方
WEBページで該当の戦いを検索し、その内容で判断していた。例えば、問題の
シェンカーバンの戦いについては、Wikiでも国により評価が違う。
英語版:フランス軍の戦術的勝利
フランス語版:フランス軍の戦術的勝利、ロシア軍の戦略的勝利
ドイツ語版:フランス軍の勝利
ロシア語版:フランス軍の戦術的勝利
この戦いは、フランス軍がロシア軍主力を捕捉できるかどうかが目的であった。
ロシア軍は、後衛部隊でフランス軍前衛を足止めして主力の後退を援護できれば
目的が達成でき、史実ではそうなった。その為、ロシア軍の戦略的勝利は正しい。
もう1つの見方として、”戦場を支配できたか(敵は敗退したか)”を勝ちの
定義とすれば、勝利はフランス軍である。それで、フランス軍の戦術的勝利も正しい。
このように、見方によって勝利者が違う場合がある。自分のWEBページでは、
この場合に”引き分け”と分類した。
(3)勝敗を機械学習で予想する場合の考え方
戦術級のゲームであるバタイユゲームのデータを基に予想するので、
”戦場を支配できたか”の戦術的な勝敗を予想する事が適切である。
上記(2)のような戦略的な勝利を予想するには、データが足りない。
(4)見直し結果
(A)勝敗の見直し
次の5つについて、勝敗を変更することにした(誤記訂正も含む)。
ラシン : 勝利者= ワルシャワ公国軍→オーストリア軍
リンデナウ : 引き分け → 勝利者=フランス軍
モスクワ : 引き分け → 勝利者=フランス軍
シェンカーバン : 引き分け → 勝利者=フランス軍
コルーニャ : 引き分け → 勝利者=イギリス軍
(B)連合軍の見直し
フランスに敵対する国の軍が複数ある場合は、”連合軍”の
表記をしていた。しかし、イギリス軍を含む場合と、そうでない場合に
分けることにした。
英連合軍 : イギリス軍を含む場合
連合軍 : イギリス軍を含まない場合
(5)見直し結果を反映した勝敗予想
サポートベクターマシンのモデルを使った勝敗予想は、次のように良くなった。
下記以外は変更なし。
・正解率 : 0.9167→0.9583
・適合率 勝ち : 0.875→0.9375
・再現率 引き分け : 0.6667→1.0
負け : 0.8571→0.875
・予想結果(ノーヴィ、シェンカーバン、キャトルブラ、モンサンジャン)は全て正解
(6)見直し結果でも予想が外れた事例
次の2つのみ予想が外れた。
・アスペルン・エスリング : 史実の負けを勝ちと予想
・ヴュルツブルク : 史実の負けを勝ちと予想
なお、どちらの戦いも兵力数ではオーストリア軍の”やや優勢”である。
それでも勝ちの予想とする理由は、次の要因と思われる。
・アスペルン・エスリング : ナポレオンの存在
→ナポレオン不在で予想すると、史実通りの負けを予想する。
・ヴュルツブルク : 両軍の戦意の差が反映されない(*1)
→戦意はデータに含まれないので、指揮官能力で代行し、
連合軍指揮官を”ウェリントン公爵”と同等の値で
予想すると、史実通りの負けを予想する。
(*1)史実では、オーストリア軍が主導権を握り、フランス軍を挟撃
しようとし、フランス軍が何とか逃れた。その後に、フランス軍が
総裁政府の命令で”やむなく攻撃”した。その為、戦意に差があったと思う。
<個人的な感想>
正解率95.83%は、かなり良い予想である。予想が外れた(6)の事例では、
ナポレオンの評価が面白い。アスペルン・エスリングの戦いは、ドナウ河北岸の
橋頭堡を守り増援を待つフランス軍と、増援の到着前に撃破しようとする
オーストリア軍との戦いである。いつものナポレオンの戦いのように、自分が
主導権を握って部隊の分散・集中の運用能力の差で勝つようなものではない。
その意味では、ナポレオンらしさが見えないので、不在で予想すると史実に
合う事は納得できる。