(D)ドルンブルク隘路の通過時間
前回計算した、渋滞速度と部隊の長さから計算した通過時間、通過完了時刻は以下の通り。
通過時間=部隊の長さ ÷ 2.133 (時間)、通過開始時刻はAM11:00 とする。
部隊名 | 部隊の長さ(km) | 通過時間(時間) | 通過完了時刻 |
リヴォー師団 | 1.70 | 0.80 | 11:48 |
第Ⅰ軍団騎兵 | 1.49 | 0.70 | 12:30 |
竜騎兵第3師団 | 2.57 | 1.21 | 13:42 |
ラサール軽騎兵 | 1.09 | 0.51 | 14:13 |
竜騎兵第4師団 | 2.57 | 1.21 | 15:26 |
ドルーエ師団 | 1.64 | 0.77 | 16:12 |
デュポン師団 | 2.05 | 0.96 | 17:10 |
(注)騎兵部隊の順序は、”祖国は危機にあり”さんのWEBページ1806年10月14日 ドルンブルクの
引用で先行部隊が軽騎兵、リヴォー師団、竜騎兵3ヶ連隊(師団の半数)とあったので、上記とした。
リヴォー師団は軽騎兵よりも後かもしれないが、行軍が遅い歩兵を先に通過させたと推測した。
(E)試算結果の評価
次の理由で妥当と判断する。
(a)デュポン師団の通過開始時刻が史実と余り変わらない。
史実ではPM4:00から通過を開始したとあり、上記の試算16:12(ドルーエ師団の通過
終了時刻)と偏差は12分である。
(b)ベルナドットがアポルダに到着した史実時刻と余り変わらない。
史実ではPM4:00に軽騎兵、リヴォー師団、竜騎兵3ヶ連隊(師団の半数)が到着している。
ドルンブルクからアポルダの平地部分の距離12kmを通常の行軍速度3km/hで進んだと
仮定すれば、リヴォー師団は12:00には通過しているので到着できる。
竜騎兵3ヶ連隊(師団の半分)なら13:06には通過しているので、12kmを歩兵よりも早い
4km/hで進んだとすれば到着できる。
(c)デュポン師団の通過時刻が全く合わないが(アポルダの到着時間から行軍速度3km/hで
逆算すると史実ではPM9:00頃となる)、”いくつかの弾薬車は壊れ、それが困難をさらに増した”
との記述があるので、2時間の超過は坂道での修理時間を考えれば不合理なものではない。
(d)ベルナドットがナポレオンの参謀長ベルティエ元帥に送った報告(10月14日PM9:00)では、
”竜騎兵だけでも登るのに6時間かかった”とある。これは上記の2倍以上になり矛盾する。
しかし、AM11:00からの待ち時間を含めて6時間ならPM5:00に通過完了する事になる。
上記の通過予想時間と比べて1.5時間の偏差があり、騎兵部隊の弾薬車も壊れた可能性はある。
ベルナドットが竜騎兵12ヶ連隊の中で3ヶ連隊だけ引き連れて先行したのはこのような理由かもしれない。
ただ、そうするとデュポン師団の通過開始時刻PM4:00と矛盾する。この時刻が実際の時刻か
ジャーナルを記述した人の予想時間か判断に迷う。”師団が通過できるのはやっと夕方4時になってから
であり、部隊の最後尾が隘路を抜けるのは6時になりそうだった”との記述なので、予想時間と思われる。
竜騎兵の通過完了時刻をPM5:00とすると、偏差の1.5時間を第3師団、軽騎兵旅団、第4師団で
均等に分担すれば矛盾しない。後はデュポン師団のアポルダ到着時間PM11:00(実際の時間)から
逆算してPM7:00とすれば良い(デュポン師団が0.5時間の遅延を分担する)。
この仮定で再計算したものが下記である。
部隊名 | 通過時間(時) | 遅延時間 | 通過完了時刻 |
リヴォー師団 | 0.80 | 0 | 11:48 |
第Ⅰ軍団騎兵 | 0.70 | 0 | 12:30 |
竜騎兵第3師団 | 1.21 | 0.5 | 14:12 |
ラサール軽騎兵 | 0.51 | 0.5 | 15:13 |
竜騎兵第4師団 | 1.21 | 0.5 | 16:56 |
ドルーエ師団 | 0.77 | 0 | 17:42 |
デュポン師団 | 0.96 | 0.5 | 19:10 |
<個人的な感想>
今回は史実を検証するのが目的ではなく、自家製シナリオを作成する際の第Ⅰ軍団到着時刻を
決めるのが目的である。その意味では、史実と大きく矛盾しない範囲で通過時間を計算できたのは良かった。
通過時刻は(D)と(E)の2つあるが、ここはベルナドットの言い分を信じて改訂版の(E)を使う事にする。