(4)交通渋滞時の通過時間
(A)自動車渋滞の通過時間
指定地点の通過時間は、渋滞を起している自動車群の先頭が通過してから最後尾が
通過するまでの時間である。別な見方をすれば、指定地点での渋滞解消時間である。
下記の資料p172に解消時間が記載されている。内容を式で表すと以下になる。
解消時間 = 渋滞の長さ ÷ 解消速度(20km/h)
一般道を仮定すると、上記の式は以下と読み換える事が出来る。
解消時間 = 渋滞の長さ ÷ (渋滞速度×2)
(B)ドルンブルク隘路の通過時間計算式
上記の式を適用すると、以下になる。
通過時間 = 渋滞の長さ ÷ (1.07×2)
これにより、部隊の長さが分かれば、通過時間を推定できる。
(C)各部隊の長さ
第Ⅰ軍団の編成は3ヶ歩兵師団+軽騎兵旅団であるが、史実では2ヶ竜騎兵師団と
軽騎兵旅団(予備騎兵軍団所属)が同行しており、デュポン師団(歩兵)が最後尾である。(*1)
部隊の長さは、大きく歩兵と騎兵に分かれるので、個別に計算する。(*2)
(a)ドルンブルク隘路の道幅
当時の道幅が分かる資料が見当たらないので、下記の資料p36から19世紀の標準的な
道幅の2.5〜4mを基に、広めの4mを仮定する。(荷馬車の標準的な車輪間隔(gauge)が
1.4〜1.5mなので車輪止めなどの凸部を加算して荷馬車幅を約2mと考え、現在でも片道が
1車線なので上り下りの2車線分として2倍の4mを仮定した。)
・Ways of the World: A History of the World’s Roads and of the Vehicles
(b)歩兵部隊の長さ
ア)行軍隊形
以前に記載した戦列歩兵大隊・中隊の隊形で記載した際の中隊隊形の縦方向が
約4mなので、この隊形で横方向に行進すると仮定する。
イ)兵士1人当たりの進行方向奥行
上記の隊形では1列20mで25人であるので、1人当たり0.8mになる。
3列で進めるので、1/3の0.267mが1人当たりの奥行となる。
なお、師団単位で計算するので、中隊間に空きがでる。その分の余裕を
10%と仮定して0.293mを1人当たりの奥行とする。
ウ)第Ⅰ軍団各師団の長さ
下記のOOBから人数を参照し、上記イ)で割れば部隊の長さが計算できる。
リヴォー師団 | ドルーエ師団 | デュポン師団 | |
師団の人員(人) | 5800 | 5600 | 7000 |
師団の長さ(km) | 1.70 | 1.64 | 2.05 |
(c)騎兵部隊の長さ
ア)行軍隊形
歩兵と同様に3列縦隊を仮定する。平地での隊形ならば、もっと広く展開するのが
一般的であるが、道幅4mの制約があるので難しい。
イ)騎兵1人当たりの進行方向奥行
ここでは、馬のwikiから平均体長2.7mを基にし、3列で中隊間の余裕率を歩兵と
同様の10%として、0.99mを1騎兵当たりの奥行とする。
ウ)第Ⅰ軍団に同行した騎兵部隊の長さ
第Ⅰ軍団軽騎兵 | ラサール軽騎兵 | 竜騎兵第3師団 | 竜騎兵第4師団 | |
部隊の人員(人) | 1500 | 1100 | 2600 | 2600 |
部隊の長さ(km) | 1.49 | 1.09 | 2.57 | 2.57 |
(*1)”祖国は危機にあり”さんのWEBページ1806年10月14日 ドルンブルクの
最後から3つ目と4つ目の引用にもある。ラサール将軍の騎兵部隊とは軽騎兵旅団である。
(*2)渋滞の大きな要因は弾薬車、大砲である。しかし、ここでの試算では歩兵部隊と騎兵部隊に
含めて計算し、弾薬車・大砲の通過速度を個別には計算しない(できないので・・・)。
竜騎兵師団にも騎馬砲兵半個中隊が配属されているので、竜騎兵も下馬して大砲の登坂作業に
従事したと思われる。その意味では歩兵部隊と同様に、大雑把な試算をした。
<個人的な感想>
かなり大雑把な試算であるが、比較する自動車の渋滞データも色々な箇所・車種を纏めた
大雑把な値である。その意味では似たようなものと思う。