前回のつづき
(D)大砲を登らせる為の人力
前回計算した6ポンド砲にかかる力185kg重に負けないで登らせるためには、
何人必要かを試算する。
(a)人力と馬力
標準的な人の力をWEBで探したが、見当たらない。しかし、1馬力=4人力が
一般的とのWEBページを見つけたので、馬力を探す事にした。
(b)馬力
wikiから1馬力は75kg重 m/secである。これは、平均して75kgの重さの荷物を
毎秒1m動かせる仕事率である。言い換えると平均75kg重の力に負けないで動かせる力である。
(c)大砲を登らせる人数
上記(a)(b)から、後向きの力(kg重) ÷ (75÷4) =重量(kg重) ÷ 18.75 人となる。
6ポンド砲の場合は、185 ÷ 18.75 = 9.9で約10人が必要になる。
荷物や弾薬を運ぶ荷馬車の重さは、6ポンド砲弾薬車の重さ1433kg(*1)を
基準にすると、同様に計算して約11人が必要になる。
(*1)Napoleonic Ordnance Weight and Range Tables p79.
(d)歩兵1ヶ師団の荷馬車数と登攀に必要な人数
ア)歩兵連隊管理の荷馬車
各連隊用に3台、各大隊用に2台の荷馬車を保有する(*2)。ベルナドット軍団の場合は、
平均して1ヶ師団当たり合計3ヶ連隊、合計8ヶ大隊の編成なので、合計25台の荷馬車となる。
(3×3 + 2×8 =25)
(*2)Napoleon’s Infantry Handbook 項番85.
イ)砲兵中隊管理の荷馬車
ベルナドット軍団には、平均して1ヶ師団当たり1.5砲兵中隊が配属されていた。
1ヶ砲兵中隊は大砲・弾薬・荷物を運ぶ荷馬車を標準で20台(*3)保有するので、1ヶ歩兵師団当たり
30台の荷馬車がある。
(*3)Instruction sur l’artillerie de campagne p8
ウ)師団合計の荷馬車と必要な人数
上記ア)イ)から55台保有するので、平均11人/台としてのべ605人の歩兵が必要になる。
⇒歩兵師団の人員の約10%に当たる。
(2)交通渋滞の要因
道路が狭く急勾配の他に、上記のように大砲・荷馬車を登らせるために歩兵連隊から作業員を
徴集して作業させる事がドルンブルク隘路の交通渋滞の一番大きな要因である。
<個人的な感想>
荷馬車には歩兵のマスケット銃弾薬なども搭載しているので、置いて行くわけにも行かない。
急な勾配を馬と人が協力して600mの距離を1ヶ師団当たり55台分も引っ張りあげるのは大変そうである・・・。
交通渋滞を起す要因は分かったが、この要因から通過時間や渋滞解消時間を計算するのは難しい。
これについては、別な見方から次回に試算する。