前回の記事で引用したWargames with No Victory Conditions の中で
”Kriegsspiel”(ドイツ語で英語に翻訳するとWar game)という言葉がある。
これは何であるかを以下に整理しておく事にした(後で忘れるので)。
1.意味
単にウォーゲームを意味するのではなく、下記のルールに基づくゲームの事である。
・基本ルールは、プロシア軍士官von Reiswitz親子により作成された。
→ナポレオン戦争に従軍した士官との事で、1824年(ワーテルローの戦いから9年後)版
ルールはナポレオン戦争用に最適である。部隊の編制、武器などもナポレオン戦争当時のままである。
・Wikiによれば、他にもHellwig版があるとの事であるが、今回は上記を指す。
・Command Post Gamesでは、Kriegsspiel用のゲーム用品を販売している。
・1824年版ルールの英語翻訳版は、TooFatLardiesから購入できる。
2.基本ルール(1824年版)の概要
(1)ゲームスケール
(A)地図は1/7500か1/8000の縮尺。
(B)ゲームの時間単位は、1ターン2分。
→部隊が1回に移動できる距離は、実際に2分で移動できる距離になる。
152m(時速で4.6km/Hr)で、縮尺1/7500のゲーム地図なら2cmになる。
(C)HEXはない。下図(1824年版ルールの23ページから引用)のように全て地図上の距離で判定する。
(D)部隊の規模は、次の通りでブロック(上図の青や赤の駒)1ヶが対応する。
(a)歩兵は半ヶ大隊(450人)が基本。
(b)騎兵は1ヶ大隊(75騎)が基本。
(c)砲兵は半ヶ中隊(4門)が基本。
(d)上記の基本の他に、散開隊形、偵察隊などの小規模用の部隊もある。
(2)ゲームの人数
両軍のプレイヤー(1軍が複数でも良い)と審判1人で、最小でも3人でプレイする。
(3)ゲームの流れ
移動→射撃→白兵戦を1ターンとして繰り返す。白兵戦は、移動して敵に接触した方が
攻撃側になる。防御側は、後退/防御/反撃の選択ができる。
(4)その他
(A)大砲の種類は、次のものでプロシア軍のみ模擬する。フランス軍やオーストリア軍の
8・4・3ポンドカノン砲などは模擬しない(国別の特徴は模擬しない)。
カノン砲: 12ポンド砲、6ポンド砲
榴弾砲: 10ポンド砲、7ポンド砲
(B)部隊のモラルは模擬しない。
(C)勝利条件がない。
<個人的な感想>
Kriegsspielは副題(The Prussian Army Wargame)の通り、プロシア軍の為の兵棋演習ルールである。
ナポレオン戦争当時の兵器・部隊編成を基に精密なシミュレーションを目指したものと思う。
1)大砲の射程距離については、各弾の有効距離を大きめに見積もっているので、砲撃の効果が大き過ぎる。
例)6ポンド砲の射程距離。単位はm。
散弾(小玉) | 散弾(大玉) | 鉄球・榴弾有効 | 鉄球・榴弾最大 | |
Kriegsspiel | 305 | 610 | 914 | 1372 |
実際(調査結果) | 200 | 366 | 732 | 1372 |
2)部隊規模を実際の展開範囲で模擬するのは良い。隊形と兵力規模が見た目で分かり易い。
例)歩兵隊形(半ヶ大隊が1ブロック)
・1ヶ大隊の縦隊隊形や行軍隊形なら、縦長に2ブロックを並べる。(下図左側)
・1ヶ大隊の横隊隊形なら横長に2ブロック並べる。(下図右側)
・兵力の規模(南北戦争のブランディステーションの戦いの例)
歩兵大隊の数が分かるので、兵力の規模が分かり易い。
3)部隊の移動を距離で行うのは、下図のような縮尺定規があっても面倒である。
その点では、HEXを使うウォーゲームは操作性が良い。