ベルナドットがフランス王位を狙っていたか?

松浦さんがブログで”ベルナドットがフランス王位を狙っていたか”について
色々と調べられている。
面白いので、私も個人的なメモを以下に残しておく。

1.概要
(1)1813年9月までは狙っていなかったと思う。
(2)1814年2月時点では狙っていなかったと思う。
(3)1813年9月から1814年2月までは分からない。

2.根拠
(1)フィンランドのトゥルクでベルナドットとロシア皇帝が会談した際に
   モロー将軍を招く事で合意して連絡した際に、モローがベルナドットに
   送った手紙の中で下記の記載がある。
   推測だが2人はナポレオン後のフランス政権代表をモローに任せる事にしたと思う。
   しかし、ドレスデンの戦いでモローがフランス軍砲弾を受け、それにより9月に死亡したので、
   この案が消滅した。

   ”私はスウェーデン皇太子ではなく、かつての戦友宛に書いている。
    私の同胞にこそ、私の心の奥底にある思いを打ち明けることができるし、またそうすべきである。
    私はフランス軍の先頭に立ってフランスに戻る覚悟はできている。
    しかし、外国軍の先頭に立ってそうすることは嫌だ。” 
    Bernadotte, prince and king : 1810-1844(Dunbar Plunket Barton)p85
    原文は下記。
    ”It is not to the Prince Royal of Sweden that I address myself, but it is to my old comrade in arms.
    It is to my compatriot that I can and ought to open my innermost thoughts.
    I am ready to invade France at the head of a French army,
    but I do not conceal from you my repugnance to doing so at the head of foreign troops.”

(2)ベルナドットがライン川を渡った後の1814年2月にフランス国民に向けて公布した下記の
   内容から、彼の野心にフランスが無いことが分かる。

   ”フランス人諸君、私は国王の命により、スウェーデン国民の権利を守るため武器を取りました。
    彼らが受けた侮辱への復讐を果たし、ドイツの解放に加わり、ライン川を渡りました。
    私が幾度となく諸君のために勝利を収めてきたあの川岸の光景を思い浮かべると、
    私は諸君に私の心の奥底にある思いを伝えずにはいられません。
    すべての見識ある人々は、フランスが維持されることを切望しています。
    彼らの唯一の目的は、フランスが世界の災厄であり続けることを防ぐことです。
    君主たちは、いかなる国に対しても戦争を仕掛けるために連合を組んだのではなく、
    貴国政府に他国の独立を認めさせるためです。
    これが彼らの思いであり、私はその誠実さゆえに、皆さんへの保証人となります。
    自由な国民の選択によって大グスタフの玉座に就いたカール13世の養子として、
    今後、私が抱く野心はただ一つです。スカンジナビア半島の繁栄のために尽力すること。
    新たな祖国への神聖な恩義を果たすと同時に、かつての同胞の幸福にも貢献できれば幸いです。”

     Bernadotte, prince and king : 1810-1844(Dunbar Plunket Barton)p119から120
    原文は下記。
    ”Frenchmen, I took up arms by the order of my King to defend the rights of the Swedish people.
     Having avenged the affronts which they received, and having joined in the deliverance of Germany,
     I have crossed the Rhine. The vision of that river,
     on the banks of which I have so often fought victoriously on your behalf,
     impels me to express to you my inner- most thoughts.
     All enlightened men cherish the wish to see France preserved.

    Their only object is to prevent her from continuing to be the scourge of the world.
    The Sovereigns have not joined in a coalition in order to make war upon any nation,
    but in order to force your Government to recognise the independence of other States.
    These are their sentiments, for the sincerity of which I am to you their surety.
    Adopted son of Charles XIII., placed by the choice of a free people on the steps
    of the throne of the Great Gustavus,
    I can have in the future no ambition except to work for the prosperity of the Scandinavian Peninsula.
    Would that I might succeed, while discharging that sacred debt to my new country,
    in contributing at the same time to the happiness of my former compatriots.”

(3)1813年8月から1814年2月までは次の戦いが続いており、その中でフランス王位を狙って
   準備するのは容易ではない。可能性は0ではないが・・・。

   ・ベルリン戦役 グロスベーレンの戦い8月23日、デネヴィッツの戦い9月6日。
   ・ドレスデンの戦い8月26,27日。
   ・ライプツィヒの戦い10月16-18日。
   ・デンマーク侵攻 12月13日キール到着、25日侵攻開始。
    1814年1月14日キール条約締結(ノルウェー獲得)。
   ・キール条約前のノルウェー総督クリスチャン・フレデリックがノルウェー議会の承認を得てノルウェー国王を宣言。
   ・ノルウェー侵攻 1814年7月から8月(戦闘終結)
    11月4日にノルウェー議会がスウェーデン国王カール13世をノルウェー国王カール2世として認めた。

<個人的な感想>
フランス王位を狙うには色々な根回しが必要になると思う。
どちらかと言えば慎重なベルナドットが十分な準備もなしに行動するとは思えない。
行動する前の準備段階で色々な人に野心を疑われた可能性は残る。

(1)のモロー将軍勧誘時点では野心はなかったと思う。友人を囮にするほど人は悪くない。
(2)の公布後に野心を持つほど愚かでもない。
(1)と(2)の間で野心を持った可能性はあるかもしれない。母国であるし。

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