1813年のカール・ヨハン(4)

カール・ヨハンとモローがシュトラールズントでカール・ヨハンが置かれている
戦略的位置について議論をした内容を意訳してみた。

モロー:君の補給線は、バルト海、エルベ川、オーデル川の間にある危険なもので、
    シュトラールズント以外に拠点はなく、フランス軍に占領された要塞に囲まれている。
    ベルリンに進めば、まさに死の罠をくぐり抜けて、敵の城門に入ることになる。

カール・ヨハン:その通り。位置的に悪いのは認める。
    我々の仲だ、私の考えを君が粗末に扱うとは思えないので、話す。
    今いる位置は、君の戦略的本能に反する危険な位置であるが、
    スウェーデンにとっても私にとっても政治的、軍事的に有利な点がある。
    政治的には、私だけが北ドイツで権威を持っている。
    プロイセン人、メクレンブルク人、ハンザ同盟の諸都市は私の指示を仰いでいる。
    私は、すべての同盟につきまとう危険に備えなければならないことを知っている。
    もし同盟国に大きな逆風が吹き荒れれば、我先に逃げたり、和平のために奔走したり、
    約束を裏切ったり、同盟国を犠牲にしたりする国がでるだろう。(*1)
    ナポレオンは、ご存知のように、戦場よりも交渉に積極的な人物である。
    軍事的には、ダブー元帥の軍団とデンマーク軍は自軍からの18000人を割いて抑えられる。
    十分な騎兵も持っており前衛・側衛ともカバーできる。
    エルベ川の要塞群から出撃してくる部隊には60000人を配備できるので対処できる。
    ナポレオンは無駄な行軍で軍を疲弊させるだろう。(*2)
    我が軍の動きよりも、この点を計算に入れている。
    (*1)バウツェンの戦い後の休戦交渉に除外された事が苦い教訓として残っている。
    (*2)トラッヘンベルク計画を想定している。

モロー:その考えは私を超えている。政治的に有利かもしれない。
    しかし、それが戦略的に合格点を取れるかどうかは別の問題だ。

カール・ヨハン:その通りだ。
    スウェーデンの皇太子として、私はシュトラールズントを守らなければならない。
    勝っても負けても、私はデンマーク、ノルウェー、そして最近の
    同盟国であるイギリスと手は切れない。
    私はポーランドの湿地帯で生涯を終える気はない。あるいはカール12世のようにベンダーで。
    スウェーデンとの連絡が途絶えれば、私の軍隊は失われ、祖国は災難に見舞われる。

モロー:私は欧州各国の政策についてあまり知らないので、
    このようなデリケートな問題を論じることはできない。
    私は君に率直な意見を述べる義務がある。君は負けると思う。

カール・ヨハン:そうでないことを願っているし、不利な条件では決して戦わない。

モロー:君は常に状況を支配し続けられるのか?ベルリンに何のメリットがある?
    砦も自然の防御もない、開けた場所に立つ都市をどうやって守る?

カール・ヨハン:ナポレオンが私からベルリンを奪えるとしても、代償は安くないだろう。
    それに、私は常にナポレオンより先手を取るようにする。
    シュトラールズントやルーゲン、あるいはわが艦隊に後退しなければならないかもしれないが、
    ナポレオンが私を捕らえることはないだろう。

<個人的な感想>
カール・ヨハンは久しぶりに話が合う友と議論できた事を喜んだと思う。
プロシア国王から強く要請されたベルリン防衛と、その方面への進軍が危険な事は
上記の議論で分かる。
しかし、トラッヘンベルク計画の狙い通りナポレオン本体の側面を突くベルリン方面への
進軍は変えられないものである。(将来のノルウェー奪取の為に)

結果論で言えばカール・ヨハンは成功した。しかし、分かる人が見ればカール・ヨハンが
負ける可能性が大きいのだろう。ナポレオンが東のオーストリア・ロシア・プロシア同盟軍に
注意を向けて北のプロシア・スウェーデン同盟軍を軽く見たのが幸いしたと思う。
東の抑えはネイ元帥に任せて自らベルリン方面へ進んだら、カール・ヨハンは帰国する羽目になったかも・・・。