ネイ大佐がサンブル・エ・ミューズ軍でベルナドット准将の部下だった頃の話で、
面白そうなものを見つけた。
アルデンホーヘンの戦いの翌日(10/3)の夜に、ベルナドットはギーレーンの
宿屋で敵のヴェルネック中将の輸送ルートを見つけた。2〜3時間前に彼が
慌てて逃げ出した際に忘れていったもの。そこで、以下の命令をネイに出した。
<命令の意訳>
君を部下に持つ将軍は幸運な男である。私は、それに大変感謝している。
引き続き敵を追撃せよ。私が使えるものは、何でも使える副司令官に任命する(*)。
友よ、やってみる価値のある大変重要な任務がある。実行の名誉と成果の恩恵は、
全て君のものだ。ヴェルネック中将が護衛付きで輸送している小麦粉を奪うのだ。
輸送隊はノイスとデュッセルドルフの渡河地点に向かっている。
たぶん、危険な事になる。しかし、それでも・・・。
私は2〜3時間、休む事にする。君もそうした方が良い。明日は2人とも、
眠る時間がなくなるだろうから。
<地理的な位置と時間>
激戦だったアルデンホーヘンの戦いの翌日の夜には40km離れた
ギーレーンまで追撃していた。その夜から、翌朝までに23km離れた
ノイスまで出かけて待ち伏せをする事になる。ベルナドットは、ネイに
増援として騎兵2ヶ連隊、歩兵2〜3ヶ中隊、大砲2門を送った。
その時は、ユーサル騎兵1ヶ連隊を指揮したと思われる。命令の(*)
で副司令官と言っているのは、上記の兵力がベルナドット部隊の半分
以上になる為と思われる事、および自主的な判断で行動しろと言って
いるのだろう。
大砲と徒歩歩兵が一緒なので、行軍速度は3〜4km/hになり、
ノイスまでは6〜8時間かかる。
<奇襲>
ノイスには1200人の騎兵が輸送隊を護衛していた。ネイは、一部のフランス兵を
おとりにして騎兵を誘い出そうとしたが、オーストリア軍は防衛に徹した。そこで、
ノイスの町中に入った時に、歩兵、砲兵、下馬した騎兵の統合部隊で奇襲した。
オーストリア軍は、いくつかの荷馬車に火を点け、残りと共に逃げようとしたが
失敗。ネイは全ての荷馬車を捕獲した。
翌朝(10/5)にもデュッセルドルフの城壁まで敵を追い払い、ノイスに戻った。
フランス軍の本隊(クレベール師団)がノイスに到着したのは、10/6であった。
<個人的感想>
ネイへの命令は、かなり無茶なものと思う。兵士が休む時間も2〜3時間で、
23km夜行軍してから再び戦いになる。また、ベルナドットの部隊が前衛なので、
本隊は更に後方にあり、何かあってもネイに預けた以上の増援は難しい。
それでも、ネイならやれると考えて命令したのだろうが・・・。
ネイも見事に成し遂げたと思う。たぶん兵士達には不満と無茶の思いがあった筈
だが、それを引っ張って行き、歩兵・砲兵・騎兵の統合部隊で敵騎兵を町中で
撃破したのは、素晴らしい。
<リンク>