オーストリア軍の密集隊形

バタイユゲームではオーストリア軍の密集隊形を2つ模擬している。
Battalion MasseとDivisional Masseであるが、後者を師団密集と和訳したのは
間違いであることに気づいた。後のために以下にメモしておく。

1.背景
  大隊の隊形なのにDivisionalという名前は変な感じは受けていたが、
  軍事用語のDivisionは一般的に師団を意味するので師団密集と和訳した。
  しかし、同じ密集隊形なのにBattalion Masseは騎兵が通過できないが、
  Divisional Masseは通過できる(方陣と同じ)。
  そこで、実際の隊形を詳しく調べることにした。

2.Divisional Masse
  和訳するならば2中隊密集とした方が良い。
  1ケ大隊が6ケ中隊編成の場合に下図のように2ケ中隊が
  背中合わせになって横方向3グループに分かれるのがDivisional Masseである。
 (グループ間の距離は図よりも広く、下図は縮めてある。その間を騎兵が通り抜けられる。)

  オーストリア軍の連隊編成では、下図のように2ケ中隊をDivisionと呼んでいる。
  下図はAustrian Grenadiers and Infantry 1788-1816の19ページから引用した。

  Marshal Enterpriseの説明は、兵士の向きが書かれていないので分かりにくい。
  下図はワグラムの戦いの特殊ルール31ページから引用した。

3.Battalion Masse
  1ケ大隊が6ケ中隊編成の場合に下図のように1ケ中隊が横に展開して、
  縦に6ケ中隊が並ぶものである。横隊と縦隊の中間のようなもの。
 (中隊を構成する4ケ小隊間は狭く、騎兵は通り抜けることは出来ない。)

4.参考資料
  下記のWEBページにお世話になりました。ありがとうございます。
  (Marshal Enterpriseが引用した1807 Exercier-Reglementの該当ページ。)
 ・Veränderte march direction einerbatallions masse von halben divisionen
  (changed march direction of a batallions mass of half divisions )
 ・Massen von Divisionen zur Verteidigung gegen Kavallerie
  (Masses of divisions for defense against cavalry)

<個人的な感想>
アスペルン・エスリンクの戦いとワグラムの戦いでフランス軍騎兵を迎え撃ったオーストリア軍歩兵は
Battalion Masseの隊形を組んで撃退したようだが、余り有名にはなっていない。
砲撃に弱い弱点があるが、それは方陣と同じである。
ワーテルローの戦いで方陣が活躍した事が知られているのは、イギリス軍の宣伝効果かもしれない。